SCD・MSA診療の概念・指針

早期鑑別診断のポイント

診断の概要

SCDの診断に際しては、まず遺伝性かどうか、そして純粋な小脳障害型か、それ以外の症状もみられる多系統障害型かを評価します(表1)。非遺伝性で(孤発性)、純粋な小脳失調症型であれば皮質性小脳萎縮症、多系統障害型であれば多系統萎縮症の可能性が高くなります。 頭部MRI、CTスキャンなどの画像検査では、孤発性、遺伝性を問わず、純粋な小脳失調症型では小脳の萎縮などが認められ、多系統障害型では小脳のほかに脳幹の萎縮などが認められます。


表1 主な症状・画像所見
  主な症状 画像所見
小脳障害型
  • 小脳症状

    運動失調症状:バランス困難、急な運動の変換や距離の測定が困難

  • 小脳の萎縮
多系統障害型
  • 小脳症状

    運動失調症状:バランス困難、急な運動の変換や距離の測定が困難

  • パーキンソン症状

    動作緩慢、体や筋肉の硬さ、振え、歩行障害

  • 自律神経症状

    起立性低血圧、排尿障害、排便障害

  • 錐体路症状

    足のつっぱりによる歩行障害など

  • その他

    四肢や顔面の不随意運動、てんかん発作、嚥下障害、睡眠時呼吸障害など

  • 小脳、脳幹の萎縮

鑑別疾患

皮質性小脳萎縮症は悪性腫瘍に伴うもの、自己免疫性、アルコール性、甲状腺機能低下症に伴う場合など、二次的によく似た病像を呈することがあるため、それらを鑑別する必要があります。特に経過が亜急性であったり、症状に変化があるときはその可能性が高いので、十分に調べる必要があります。

鑑別疾患の例
  • 小脳腫瘍
  • 小脳脳血管奇形
  • 脳血管障害
  • 多発性硬化症
  • ベーチェット病
  • 脳幹脳炎
  • アーノルド・キアリ奇形
  • 脳表ヘモジデローシス

診断の実際とポイント

診断においては「問診」と「神経学的診察」が重要です。問診では、遺伝性の有無、症状の特徴などを把握するため、家族歴、既往歴・生活歴、嗜好品、現病歴などを十分に聴取します。

表2 問診のポイント
内容 聴取のポイント
家族歴
  • 同様の症状を呈する家族の有無
  • 近親婚の有無
  • てんかんや若くして亡くなった血縁者の有無
既往歴・生活歴
  • 頭部の外傷歴
  • 入院を要する病気の既往
  • 現在治療中の疾患および投薬状況
  • 有機溶媒や特殊な金属への暴露(職業上)
嗜好品
  • アルコール歴(いつごろからか、1日量、頻度)
  • 禁酒の効果(ふらつき改善の有無)
現病歴
  • 症状と発症時期
  • 症状の経過(緩徐発症、急激発症)
  • 階段の上り下りではどちらが難しいか、また、それを自覚しはじめたのはいつごろからか
  • 物が2つにだぶって見えることはないか
  • 音や話し声が聞こえにくいことはないか
  • 立ちくらみやめまいはないか
  • 汗をよくかくことはないか
  • 勃起の障害はないか
  • 最近やせてきていないか、力が入りにくいことはないか

神経学的診察として、画像検査のほか自律神経検査、神経伝導速度、針筋電図、神経耳科・神経眼科的検査、生化学的・血清学的検査、髄液検査、シスメトリー、遺伝子検査などを必要に応じて実施します。

神経学的診察のポイント
画像検査
  • MRI所見の特徴
    • 被殻外側の線状のT2高信号域
    • 橋の十字状のT2高信号域
    • 中小脳脚のT2高信号域
自律神経検査
  • オリーブ橋小脳萎縮症の診断
    • ティルト・テーブルを用いた起立性低血圧の試験
    • 皮膚の交感神経の反応
    • 心電図上での拍動間隔の測定
神経伝導速度、針筋電図
  • 末梢神経障害を高頻度に合併する病型の診断
    • SCA3/マシャド・ジョセフ病、フリードライヒ病など
  • 末梢神経障害を高頻度に合併する疾患との鑑別
    • アルコール性、がん性の小脳失調
神経耳科・神経眼科的検査
  • 眼球運動の異常の評価
  • 小脳・前庭機能の異常の評価
生化学的・血清学的検査
  • ホルモン異常(視床下部、甲状腺機能低下症など)の評価
髄液検査
  • 鑑別診断(小脳の炎症などを評価)
    • ウイルス性小脳炎、ベーチェット病、多発性硬化症、癌性髄膜炎
シストメトリー
(膀胱内圧測定)
  • 主にオリーブ橋小脳萎縮症の診断
遺伝子検査
  • 家族性のSCDの診断

監修:国立精神・神経医療研究センター 理事長・総長 水澤英洋先生