SCD・MSA相談Q&A
脊髄小脳変性症(SCD)・多系統萎縮症(MSA)と診断された患者さんやご家族の方々は、病気や診療などについて、知りたいことやわからないことが、いろいろあるかと思います。
そこで、これまでSCD・MSA治療を専門とされる先生方に、寄せられた質問とそれに対する回答を掲載致します。SCD・MSAに対する疑問や不安の解消の一助となれば幸いです。
Q&A
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現在薬剤による治療を受けている患者さんからのご質問
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ふつう、SCA6の症状として、直接的に痛みが生じることはありません。
しかし、指や足から始まり今は全身のあちこちとのことですので、痛みの症状が増悪している可能性があります。痛み止めを服用する前に、まずは痛みの原因を探るべきであると思います。セレジストを服薬してから出現したのなら、まずは主治医に相談のうえ必要であれば服薬を中止してみることも考慮すべきです。そして、必要に応じて入院などしてきちんと調べてもらうことをお勧めします。入院して安静を保つことは、治療の一つにもなり得ると思われます。
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週2〜3回ほどの点滴または筋肉注射が必要となります。遺伝子検査については、主治医とよく話し合い理解して、ご自身でご判断してください。
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンである脊髄小脳変性症治療剤の注射薬の場合、一般的には外来治療が基本となりますが、週2〜3回ほどの点滴または筋肉注射が必要となります。
また、孤発性である皮質性小脳萎縮症と診断されたのに遺伝子検査を薦められたとのことですが、その理由の一つは孤発性でもときに遺伝子変異をもつことがあるためです。もう一つは、未だ発症機序などが十分究明されていない孤発性脊髄小脳変性症の研究の進展のためと思われます。
疾患になりやすい体質などの研究が進むことが期待されます。もし陽性のときは次の世代に関係してきますので、その点も主治医とよく話し合い理解して、ご自身でご判断いただくことが大切です。 -
他覚的な感覚障害などが存在すれば、ALSとは診断されません。
脊髄小脳変性症は、他の神経疾患に比べて筋肉そのものの衰えはほとんど見られませんが、病型によっては筋力の低下を伴うことがあります。
筋力の低下は、体力の衰えにもつながりますので、体が重く感じる原因になっているのではないかと考えられます。筋力の低下を防止するためには、できるだけ筋肉を使う努力を続けることが重要です。また、脊髄小脳変性症と医師から診断されていることから、ALSとの鑑別診断は行われていると思われます。
一般的に、他覚的な感覚障害、眼球運動障害、膀胱直腸障害、小脳症状などが存在すれば、ALSとは診断されません。もちろん、極めてまれですが、脊髄小脳変性症とALSが合併することはあり得ますので、主治医にご相談下さい。 -
セレジストと他の薬剤との併用については、主治医にご相談なさることをお勧めします。
脊髄小脳変性症(SCD)では、様々な症状が現れます。勃起障害の原因が、SCDによる可能性も考えられます。
セレジストの併用注意には、ED薬は含まれていません。しかし、ED薬の正しい知識を得ることも含めて、やはり主治医にご相談なさることをお勧めします。 -
副作用とは断定できませんので、主治医にご相談することをお勧めします。
現在、セレジストにおいて、勃起障害の副作用は報告されていません。しかし、パーキンソン症状治療薬や抗精神病薬などには、勃起障害の副作用が報告されているものもあります。また、パーキンソン症状治療薬を処方されている方ですので、自律神経障害の症状の一つとして勃起障害が現れている可能性もありますので、主治医にご相談することをお勧めします。
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脊髄小脳変性症治療剤の注射薬も、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)由来の製剤ですので、脳内濃度の推移や内分泌学的作用の違いは若干ありますが、薬の作用などにおいては根本的に大きく異なる点はありません。
脊髄小脳変性症治療剤の注射薬とセレジストの大きな違いは、剤形で経口薬と注射薬の違いです。注射薬は、週2〜3回ほどの点滴もしくは筋肉注射が必要です。一方、セレジストは1日2回の内服薬です。両者の効果に対して大きな差があるという報告もないのが現状です。
主治医とよくご相談のうえ、貴方の生活リズムに適した薬剤を選択してもらうことをお勧めします。なお後発と記載してありましたが、脊髄小脳変性症治療剤の注射薬の方が古くから市販されています。 -
現在の症状は顔と手の震えで、おそらく振戦という症状と思われます。
家族歴からは祖父、父、叔父に全身に及ぶ震えと歩行時のふらつきがある様ですので、優性遺伝性のSCDでときに振戦を伴う疾患となります。この様に全身に及ぶ様な高度の振戦を伴うことは少なく、表面筋電図などでこの不随意運動の性質をよく調べてもらうことをお勧めします。
その上で薬物治療とその内容、あるいは手術治療について良く検討することが良いでしょう。なお、よく見かける病型でないので、通常の遺伝子検査では分からない可能性があります。厚生労働省の研究班ではそのような場合の診断の支援をしています。 -
薬物療法は、医師が患者さんの症状や経過を十分考慮したうえで処方を決定されます。
主治医の先生が、セレジストの増量の必要はないと判断されていると思われますので、増量の必要はないと思われます。点滴は別の薬ですので併用が可能となっていると思われますが、それを続けるかどうかについても主治医とよく相談してその指示に従ってください。
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セレジストの服用歴やマッサージの受療も含めて、主治医の先生によくご相談なさることをお勧めします。
SCDは病気のタイプと時期により、様々な症状を認めます。排尿障害もその一つであり、SCDでは過活動膀胱が多く見受けられます。
排尿障害にはいくつかの治療法がありますので、セレジストの服用歴やマッサージの受療も含めて、主治医の先生によくご相談されて、適切な治療を受けてください。 -
SCDは病気のタイプと時期により、様々な症状を認めますので、主治医の先生によくご相談されて、適切な治療薬を服用されることをお勧めします。
SCDの運動失調症の治療薬には厚生労働省が認可している「脊髄小脳変性症治療剤の注射薬」と「セレジスト®」という2種類の薬があります。これらの薬はSCDを根本的に治癒させる薬ではなく、症状の進行を遅らせるあるいは現状維持の手助けをする薬です。いずれも、脊髄小脳変性症の運動失調症状を改善させる効果が認められています。
また、SCDは厚生労働省の認可する特定疾患に認定されています。本制度を申請することにより、医療費の補助などを受けることができます。
SCDは病気のタイプにより、様々な症状を認め、それらの症状に対して様々な薬を使いますので、主治医の先生によくご相談されて、適切な治療薬を服用されることをお勧めします。 -
脊髄小脳変性症と診断され、歩行障害、言語障害、筆記障害などの障害が出ています。現在、セレジストを服用していますが、それ以外の薬はあるのでしょうか?また、整体等は効くのでしょうか? [ 答えを閉じる ]
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン注射剤があります。
脊髄小脳変性症の運動失調症状に対する薬剤として、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン注射剤があります。
整体については科学的な根拠がまだ十分検討されていない部分があるのが現状ですので、神経内科専門医にご相談のうえ、症状に応じたリハビリテーションの実施を検討なさることをお勧めします。 -
主治医とご相談のうえ、お決めになるようお願いします。
セレジストは、妊婦または妊娠している可能性のある方には慎重に処方すべき薬剤となっておりますので、妊娠および出産期間中の服用に関しましては主治医とご相談のうえ、お決めになるようお願いします。
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特に問題はありません。
通常の栄養ドリンクはビタミン成分と思われますので、足のだるさが改善される等が実感できるのであれば、薬剤と併せて飲用していただいても特に問題はありません。
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主治医の先生へご相談されることをお勧めします。
リハビリテーションは、同じ疾患ではありませんが、脊髄小脳変性症の一部の病型でその有効性が証明されています。一度、専門の病院で指導を受け、その後は自宅で続けることがよいと思います。そのときも時々チェックを受けるとよいでしょう。
セレジストは、統計的に有効性が確認されていますが、症状改善の大きさ、改善を自覚できる患者さんの比率などはまだまだ小さく、効果が実感できない可能性があります。基礎研究では神経細胞の保護作用が報告されていますので、副作用がなければ使用するというのが1つの考え方で、副作用が有ればそれを押して使用する意義はないと思われます。
いずれにせよ、主治医の先生とよく相談して決めるのがよいでしょう。 -
MSAの患者さんは、運動失調症状の他に、パーキンソン症候群や自律神経障害を伴うことがあります。
小刻み歩行とありますのでパーキンソン症候群が存在しており、ふらつきだけの時より転倒傾向が強いと思われますので、転倒、外傷、骨折などに注意が必要になります。杖・歩行車の使用に加え、転倒の際、頭を保護するための帽子や保護帽の着用を検討されては如何でしょうか。
また、下肢の浮腫とのことで、低タンパク血症や心不全なども考えられますので、主治医に確認して下さい。下腿の挙上や利尿剤の使用など原因と程度で対応が変わってきます。 排尿障害がある場合は、残尿が多い時などは、自己導尿を行うことになりますが、困難な場合もあります。いくつか治療法がありますので、主治医の先生にご相談の上、適切な治療を受けるよう患者さんにお伝えください。 -
セレジストは、日本のみで承認・販売されているお薬です。
大変申し訳ございませんが海外では処方してもらうことができません。主治医とご相談の上、海外へ渡航なさる前に適正な必要量の処方を受けることをお勧めします。
監修:国立精神・神経医療研究センター 理事長・総長 水澤英洋先生