SCD・MSA相談Q&A
脊髄小脳変性症(SCD)・多系統萎縮症(MSA)と診断された患者さんやご家族の方々は、病気や診療などについて、知りたいことやわからないことが、いろいろあるかと思います。
そこで、これまでSCD・MSA治療を専門とされる先生方に、寄せられた質問とそれに対する回答を掲載致します。SCD・MSAに対する疑問や不安の解消の一助となれば幸いです。
Q&A
ご質問内容をグループ分けしていますので、まず、ご覧になりたいご質問内容を下記よりお選びください。
質問内容(Qの部分)をクリックすると回答内容(Aの部分)が表示されます。
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MSAの症状に関するご質問
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ここでご質問の精神症状とは具体的にどのような症状でしょうか。主治医が認知症専門医と記載されており認知症の意味でしょうか。またお父様の現在の年齢と症状が出たときの年齢も不明ですので、かなり一般的なお答えになることをご理解ください。
MSAではパーキンソン病のような症状として頸部後屈が現れることがありますし、うつなどの精神症状、あるいはまれながら認知症がみられる事もあります。進行性核上麻痺でも、認知機能低下が目立つことがありますし、頸部後屈が目立たないこともしばしばあります。
両者の鑑別は、典型的な症状があれば比較的簡単ですが、ふつうはMRI、SPECT、自律神経機能などさまざまな検査を併用してはじめて可能となりますし、鑑別が難しい場合もありますので、必要に応じてセカンドオピニオンなどにより神経内科専門医に受診することをお勧めします。 -
嚥下障害の徴候が出てきた時点で、食事の工夫をする必要がありますが、食事の工夫とは大きく分けて「食べやすくする工夫」と「飲み込みやすくする工夫」があります。
食事の工夫の詳細は、当Webサイト内の「在宅医療アドバイス」の中に、栄養士からのアドバイスとして掲載していますので、下記URLをご参照されてはいかがでしょうか。
http://www.scd-msa.net/advice/detail/expert/05/
また、胃瘻ですが、食事のときの様子は診察室ではよく分かりませんので、主治医には現状を詳しく報告してご相談してください。胃瘻を造る時期、使用する時期などは、どれくらいの量を食べられるか、栄養状態、誤嚥の程度、現在の体力などを総合的に勘案して、ご本人や皆様と相談の上、決めることになると思います。 -
A1.多系統萎縮症でも足が重く感じたという訴えを聞くことがあります。ただ、歩行困難はむしろ足を動かしづらかったり、バランスが悪くなったり、血圧低下などによって出てくることが多い様に思われます。
A2.要介護認定を受けたうえで、地域の難病相談・支援センターに相談して、入居可能な老人ホームを紹介してもらうことをお勧めします。介護保険の在宅サービスとして、小規模な有料老人ホームに入居している人への介護[地域密着型特定施設入居者生活介護]などもあります。
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MSAでは感覚の症状は殆ど出ませんので、他に原因となる疾患がないかきちんと診てもらうことが必要です。
「しびれ」は、力が入らないときも使われますが、ビリビリといった感覚の異常を意味するものと理解します。ご担当の先生もそのようにお話しされているようですので、診断名を聞いてその治療をしてもらって下さい。
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自律神経障害の一つである睡眠時無呼吸症候群により、日中、過度の眠気を来した状態になっている可能性があります。
いびきが止まないことからも、既に夜間に睡眠時無呼吸症候群の症状が現れていると考えられます。睡眠時の突然死を避けるためにも、治療について主治医とよく相談することをお勧めします。
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MSAでは声帯が十分に開かなくなる(声帯外転障害)ことがあり、甲高いいびきが出る可能性があります。
声帯外転障害があると睡眠時無呼吸症候群を引き起こすこともありますので、主治医に報告して治療法をご相談することをお勧めします。
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MSAの主な症状は、自律神経症状や小脳症状(構音障害、歩行障害など)、パーキンソン症状(筋固縮、安静時の手先の震えなど)ですが、物忘れやうつ症状、同じ事を繰り返し話すなどの精神症状が合併する患者さんもおられます。
この患者さんのご年齢がわかりませんが、高齢になればアルツハイマー病などの合併もあり得ます。原因により治療法が異なりますので、神経内科のある大きな総合病院で診てもらうことをお勧めします。
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多系統萎縮症では、小脳症状やパーキンソン症状として喋り難くなること(構音障害)がよく見られます。認知症もまれですが、見られることがあります。
対処法としては、できるだけ大きく息を吸って話したり、言葉を細かく区切って、ゆっくり大きな声で話したりするとよいでしょう。
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多系統委縮症でてんかん症状が出ることは極めてまれと思われますが、てんかん発作はいろいろな原因で生じ、高齢になると増えてきます。
てんかん発作に対しては、まずはてんかんかどうか、次いでその原因を調べて、適切な治療をする必要がありますが、お薬を開始して有効であったようですので良かったと思います。
発熱時にてんかん発作が生じやすいこともよく知られていますが、発熱自体が発作の一部なのかということを含めて、主治医の確認していただくのがよいと思います。多系統委縮症でも便秘はよく見られますが、てんかん発作とは関係がないと思われます。 -
オリーブ橋小脳萎縮症では、てんかん発作様の症状は殆どありません。
オリーブ橋小脳萎縮症ではそれによる症状としてのてんかん発作は殆どありません。
ミオクローヌスなどの不随意運動をてんかん発作と誤解している、あるいは偶々、てんかん発作が合併した可能性があります。いずれにせよ主治医に「発作」の内容をよく説明し、脳波やMRIなど必要な検査を行った上で診断を確定し、適切な治療を行う必要が有ります。 -
MSAでは、進行に伴い様々な症状が現れますが、無意識な睡眠時に、自分の意思とは無関係に生ずる不随意運動や異常行動がみられることもあります。
これらはむずむず脚症候群であったり、レム睡眠行動異常症と呼ばれるもので、お薬である程度コントロールできますので、主治医とご相談ください。
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起立性低血圧の可能性があります。
多系統萎縮症では、さまざまな自律神経症状が出現します。寝た状態から身体を起こした際に、脳への血流が少なくなることで、立ちくらみや失神が起こることを、起立性低血圧といいます。
治療には、血圧を上げる薬を医師に処方してもらうことや、下半身をタイツなどで圧迫して症状を軽くすることなどが挙げられます。
また、急に起き上がることはせず、ゆっくり上体を起こすようにしてください。 -
進行の程度は、主治医にご確認いただくようにしてください。
脊髄小脳変性症の中で、多系統萎縮症は比較的症状の進行が早いことが知られています。
ただし、自律神経症状の出現にも個人差がありますので、一概に進行が早いかどうかという判断は意外と難しいのです。進行の程度は、全体を把握している主治医にご確認いただくようにしてください。 -
交流会への参加をお勧めします。
この病気では、患者さんは運動失調が進行するにつれて家に閉じこもりがちになり、周囲とのコミュニケーションが次第に薄れて、強い孤独を感じるようになることがあります。また、強い不安からうつ状態になり、カウンセリングや精神科医の診察が必要になる方もあります。このような方には不安やうつ状態等を和らげる薬物を一時的に使うことがあります。
患者さんのうつ症状を解消する方法の一つに、グループリハビリがあります。患者さんが保健所等に集まって、集団でリハビリの体操をしたり、歌をうたったり、しりとりをしたり、身の周りの事についてグループ討論をしたりします。1人でリハビリをするよりも皆でやった方が楽しいですし、普段言えない愚痴なども、同じ病気の仲間同士なら話しやすく、よく聞いてもらえるので、参加された方からは好評を得ているようです。
自治体によって行っているところと、行っていないところがありますので、最寄りの保健所に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
また、周囲に同病の方がいらっしゃらなくて不安を感じている方には、「全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会」が開催する交流会への参加をお勧めします。会員相互の交流を深めるとともに、それぞれの方が抱える問題や疑問を相談し合う場として、多くの方が集まっています。
監修:国立精神・神経医療研究センター 理事長・総長 水澤英洋先生