SCD・MSA相談Q&A
脊髄小脳変性症(SCD)・多系統萎縮症(MSA)と診断された患者さんやご家族の方々は、病気や診療などについて、知りたいことやわからないことが、いろいろあるかと思います。
そこで、これまでSCD・MSA治療を専門とされる先生方に、寄せられた質問とそれに対する回答を掲載致します。SCD・MSAに対する疑問や不安の解消の一助となれば幸いです。
Q&A
ご質問内容をグループ分けしていますので、まず、ご覧になりたいご質問内容を下記よりお選びください。
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MSAの治療に関するご質問
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多系統萎縮症の患者さんでも、医師の指導の下であれば睡眠薬の服用は可能です。
多系統萎縮症の自律神経症状として夜間頻尿などが起こることがあり、安眠できない時には睡眠薬も有効なことがありますし、一方で睡眠時無呼吸、睡眠時喘鳴などの症候も知られていますので、主治医によく相談することをお勧めします。
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多系統萎縮症(MSA)では、体の動きが遅くなる、筋の固縮などのパーキンソン病のような症状が現れる病型(MSA-P)があります。
したがって、多系統萎縮症でも抗パーキンソン病薬が処方されることはあります。ただ、パーキンソン病のようにお薬が良くは効かないことが多いので、その時は主治医にきちんとお話しください。
多系統萎縮症では、他に歩行時のふらつきなどの小脳失調症状、血圧低下などの自律神経症状も良くみられます。 -
高血圧症状を改善するお薬はあります。
ただ、立位の血圧は正常値よりもやや低めなようですし、寝ている時の血圧も非常に高い訳ではないと思われます。主治医の先生は、立位の時の血圧を保つことを含めて、総合的に考えて、血圧を下げる薬を処方していないように推測されます。血圧の状態が気になるようでしたら、まず主治医にご相談することをお勧めします。
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MSAに対するアントシアニンの効果は、科学的な根拠がまだ十分検討されていません。
一般的に、試験管内やネズミなどの動物モデルで有効であった薬物候補が、ヒトの脳疾患ででも有効性を証明されることは極めてまれであるのが現実です。サプリメントに対しては個々の患者さんで状況が異なる可能性がありますので主治医にご相談ください。
今できることとしては、神経内科専門医にご相談のうえ、症状に応じた薬物療法やリハビリテーションの実施を検討なさることをお勧めします。 -
科学的な根拠がまだ十分検討されていないのが現状です。
グルタチオン製剤については認知症では研究が先行しているものの、MSAの治療に対しては科学的な根拠がまだ十分検討されていません。
腰折れや首下がりなどの姿勢異常はパーキンソニズムを呈する疾患で時々みられる特徴的な症状ですが、中には局所麻酔薬の注射やリハビリテーションなどが有効な場合があります。神経内科専門医にご相談のうえ、症状に応じた薬物療法やリハビリテーションの可能性を検討することをお勧めします。 -
弟さんがMSAに罹患されているとのことお察し申し上げます。MSAに対する再生医療の治験ですが、現在のところ計画されていないと思われます。
MSAの罹病期間は近年、相当に延長しており、現在もいろいろな工夫が続けられております。個々の患者さんの状態に合わせてどのようにするのが良いか考えて対応する必要がありますので、主治医の先生によくご相談ください。
再生治療などが何故難しいのかなどについてもお伺いしてみてはいかがでしょうか。直接お聞きできればご理解が進むのではないかと思われます。もし必要な場合はSCDやMSAを専門的に診ている施設を紹介していただいて、ご相談に行くのも1つの方法かもしれません。
国内で実施されている臨床試験を定期的にご確認なさりたい場合は、下記ホームページをご参照下さい。
■臨床研究情報ポータルサイトのホームページ
https://rctportal.niph.go.jp/※上記バナー・URLをクリックすると外部サイト「『臨床研究情報ポータルサイト』国立保健医療科学院のホームページ」へ移動します。 -
多系統萎縮症は、ほとんどが孤発性の神経変性疾患であり、小脳と脳幹の萎縮を呈し、様々な運動失調症状やパーキンソン症候群、自律神経症状がみられる疾患です。
薬の副作用で起こる病気ではありません。また、手術で治すこともできません。専門の神経内科医を受診し、まずは正確な診断を受けてから、適切な治療を受けることをお勧めします。
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現在、MSAによる構音障害を根本的に良くする薬剤はありません。
ただ、その背景がパーキンソニズムなのか失調性や痙性なのかで多少なりとも役立つ薬物があるかもしれませんし、リハビリにも役立ちますので、まずは主治医の先生によく相談してみてください。
構音障害そのものの治癒はできませんが、どのように克服あるいは代償していけばよいかを言語療法士に示してもらい、一緒に練習していくことで、話しやすくなる、相手に伝えやすくなるという効果が期待できます。
また、症状が進行して話しづらくなった際には、機器などを利用した他のコミュニケーションツールの活用も検討してみてください。 -
現在、多系統萎縮症の根治療法はなく、在宅療養が基本となります。
個々の症状には生活指導や薬物療法に加え、リハビリテーションによる支持療法があり、主治医と相談しながら治療方針を選択していくこととなります。すなわちリハビリテーションも重要な治療の一部です。呼吸器の装着については、睡眠時無呼吸の治療など必ずしも延命治療でないこともありますので、やはり主治医とよく相談する必要が有ります。
また、緊急時や一時的なレスパイト入院(短期入院)を受け入れてもらえる医療機関もありますので、地域の保健所や難病相談・支援センターへ相談することをお勧めします。 -
「小脳を増幅」させるお薬は残念ながらありません。
また、小脳の機能を回復するためには、単に失われた細胞を補うだけではなく、それら相互のネットワークが必要であり、それが小脳障害の再生医療の難しいところです。
治験の案内は、主治医、全国SCD・MSA友の会、あるいはメディアを通じてなされると思いますので、きちんと主治医との関係を維持し、友の会からの情報にも留意することが大切と思います。 -
主治医の先生や患者さんとよく話し合うことが大切です。
まず気管切開ですが、これは、吸引を容易にし、誤嚥を防ぎ、声門閉鎖などが生じても呼吸困難(閉塞性呼吸困難)を防ぐ方法です。
ご心配のように、このようにしても中枢性の呼吸困難による突然死なども報告されていますが、これは希と思われること、またそれは人工呼吸器につないでおく以外に防ぎようがないことを考えますと、同じ重みで比較することは適切ではないと思われます。
既に構音障害が進行しているようですが、気管切開していても特殊なカニューレを使うと発声することは不可能ではありません。
胃瘻は、お口から食事を取ることができないときに、腹壁から直接に胃にチューブを入れてそこから栄養成分を注入する栄養の仕方です。お口から食べる楽しみが失われ、簡単ながらチューブを通す手術が必要ですが、誤嚥などを防ぎ、点滴注射などでは不十分になりがちなカロリーを摂取できるというメリットがあります。
もちろん、このようなことも理解した上で気管切開や胃瘻は望まないという患者さんもおられます。すなわちまさにケースバイケースです。
したがって、納得が行くまで主治医の先生や患者さんとよく話し合って決めることがよいと存じます。 -
排尿障害は自律神経障害の一症状としてよく生じます。また、排尿障害があると感染すなわち膀胱炎を起こしやすく発熱もみられます。
MSAは、自律神経障害が認められることが多く、排尿障害もその症状の1つです。排尿障害を放置しておくと尿道に細菌等が侵入し、膀胱炎を発症する可能性があります。膀胱炎は泌尿器科はもちろん、一般内科でも尿検査、血液検査で診断できます。
ただし、頻繁に再発したり、発熱症状が続くなどした場合は、重篤化する可能性もありますので、主治医に相談し泌尿器科専門医を受診する方がよいでしょう。 -
健康保険を適応する訪問リハビリ鍼灸マッサージを実施している医療機関があります。
関節拘縮・麻痺などがあり、医師が鍼灸・マッサージによる施術が必要と判断され、かつ歩行困難のため往診が必要と判断された方々に対し、鍼灸・マッサージによる訪問リハビリを行っている医療機関があります。
ただし、鍼灸・マッサージでMSA等の神経難病患者さんの嚥下障害や排泄障害が改善されたという明確な科学的根拠はありません。まずは主治医にご相談ください。 -
運動機能の維持・向上には、病状に即した最適なリハビリを指導してもらう必要があります。まずは、主治医の先生にご相談することをお勧めします。
また、リハビリ関連の情報としては、下記ホームページに「全国のリハビリテーション科専門医リスト」が掲載されています。
日本リハビリテーション医学会
http://www.jarm.or.jp/※上記URLをクリックすると外部サイト「公益社団法人 日本リハビリテーション医学会のホームページ」へ移動します。
本Webサイトにも、「在宅リハビリテーション」に関する情報を掲載していますので、是非ご覧ください。
http://www.scd-msa.net/rehabilitation/ -
専門医の指導に従い、リハビリを実施することをお勧めします。
MSAなどの神経難病患者さんのリハビリは、専門医が患者さんの運動機能障害の程度を確認した上で、リハビリの目的と実施内容を決めます。また、リハビリは継続的に毎日行ってゆくことが大切です。小脳の機能回復のためには反復して行うことが重要であり、毎日の繰り返しの練習が機能の維持にもつながります。
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トレーニングの内容や継続の是非については、主治医の先生によくご相談ください。
MSAは病型により日常生活の妨げとなる多様な症状が現れます。また、病気の進行に伴い、不自由さが徐々に増していきます。そして、本来の病気に加え、不活発な生活を送ることによって機能が衰え(廃用症候群)、不自由さがさらに強まります。
自主トレーニング(=リハビリテーション)の目的は、障害の進行状況を踏まえた適切な運動と不自由さを補う手段の工夫により、廃用症候群を予防し、少しでも身体機能・日常生活能力を維持・向上することにあります。
そのためには、専門家による指導のもとに、適切な運動を安全に無理なく行うこと、家庭で少しずつでも続けられる運動を身に付け、実行することが大切です。トレーニングの内容や継続の是非については、主治医の先生によくご相談ください。 -
専門家による指導のもとに、適切な運動を安全に無理なく行うこと、家庭で少しずつでも続けられる運動を身に付け、実行することが大切です。
MSAの運動失調症状により、屋外の歩行が困難となって外出時に車椅子を利用するようになっても、歩行訓練を続けることにより筋力を維持し、屋内での移動能力を保持することに役立ちます。
そのため、専門家による指導のもとに、適切な運動を安全に無理なく行うこと、家庭で少しずつでも続けられる運動を身に付け、実行することが大切です。トレーニングの内容や継続の是非については、主治医の先生によくご相談ください。 -
科学的な根拠がまだ十分検討されていないのが現状です。
鍼治療によって、多系統萎縮症の進行を遅らせることが可能かについては科学的な根拠がまだ検討されていないのが現状です。神経内科専門医にご相談のうえ、症状に応じたリハビリテーションの実施を検討なさることをお勧めします。
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主治医に診断を仰ぐとともに、別剤形の薬剤の処方についてご相談ください。
多系統萎縮症では、自律神経症状の一つとして起立性低血圧がみられます。
パーキンソン症状の治療薬の多くは血圧を低下させる作用がありますのでむしろ注意が必要です。パーキンソン症状の治療薬には、注射薬と皮膚に貼付する薬剤があります。もし必要な場合は、主治医に別剤形の薬剤の処方についてご相談なさることをお勧めします。 -
公的なサポートを受けることをご検討ください。
ご家族の方による介護が困難な場合、介護保険制度によりヘルパーを派遣してもらうなど、公的なサポートを受けることをご検討ください。居住地の市町村の障害福祉担当窓口にご相談なさることをお勧めします。
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筋肉の緊張をやわらげるお薬や少しでも関節の動く範囲を広げるリハビリを行ったりすることを検討してください。
多系統萎縮症は、発症してからの時間経過とともに、関節拘縮・筋強剛などのパーキンソン症状や、起立性低血圧・便秘などの自律神経症状が顕著になってきます。
主治医とご相談のうえ、筋肉の緊張をやわらげるお薬や少しでも関節の動く範囲を広げるリハビリを行ったりすることを検討してください。その上で、小まめに爪のケアをしてあげるように心掛けてください。 -
何か別の原因が考えられます。
本来、MSAによる痛みというものはありません。頭痛等が頻繁にある場合は、何か別の原因が考えられますので、主治医にご相談されることをお勧めします。
また、主訴である平衡機能の失調による歩行障害の症状の改善には、現状では甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンおよびその誘導体が適応となります。
薬物療法のほか、リハビリ療法も並行して行うことで脳が刺激され、運動制御が改善されたり、筋力の維持に役立つことが期待されます。
監修:国立精神・神経医療研究センター 理事長・総長 水澤英洋先生