SCD・MSA相談Q&A
脊髄小脳変性症(SCD)・多系統萎縮症(MSA)と診断された患者さんやご家族の方々は、病気や診療などについて、知りたいことやわからないことが、いろいろあるかと思います。
そこで、これまでSCD・MSA治療を専門とされる先生方に、寄せられた質問とそれに対する回答を掲載致します。SCD・MSAに対する疑問や不安の解消の一助となれば幸いです。
Q&A
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SCDの症状に関するご質問
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逆流性食道炎は、胃と食道の間の弁を閉める下部食道括約筋の筋力が低下することが主な要因で、脊髄小脳変性症と関係なくよくみられる疾患です。
脊髄小脳変性症でも、自律神経障害を伴う病型があるので、逆流性食道炎を伴うことも有るかもしれませんが、よくある症状ではありません。したがって、たまたまの合併である可能性が高いと思われますし、逆流性食道炎の治療をきちんとすることで治癒すると思われます。
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脊髄小脳変性症は体幹のバランスが保てなくなることが主な症状ですので、座位が保てずに上半身が動揺しひどいと支えなければ転倒することもあると思われます。上手くしゃべれない構音障害も良くある症状ですが、寝言のような喋り方ということですので、眠気のためかも知れません。したがって、ご質問のような過眠は珍しい症状と思います。
自律神経症状として睡眠時無呼吸症候群の症状や排尿障害が存在する場合、それらにより安眠できずに日中の眠気が強くなっている可能性がありますが、主治医に相談して入院してよく調べてもらうことをお勧めします。また、その一環として脊髄小脳変性症を来している原因疾患の診断をきちんとつけることも必要です。
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SCA3であっても、必ずしもびっくり眼の症状が現れるとは限りません。
SCA3は世代が若くなる毎に発症年齢が若くなる表現促進現象があり、比較的若年〜中年で発症する病型です。SCA3の主な症状としては、眼振、眼球運動制限、小脳失調症、錐体路徴候(痙性)、びっくり眼を含むジストニアなどが挙げられ、どれが主体かで幾つかの病型に分かれます。ただ、一人一人の患者さんの症状とそれらの進行は様々で、ある病型でもそこで記載されている症状が全て出現するわけではありません。
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脊髄小脳変性症のふらつきや転倒などの歩行障害が目立つ場合は、足におもりをつける(250〜500g)、靴底を重くするなどの対処法があります。
それ以外にも、足首やひざにサポーターを巻いたり、胴に伸縮性のコルセットを巻くなどの工夫でふらつきが減少する場合もありますので、リハビリテーション科の理学療法士などにご相談することをお勧めします。現在お掛かりの主治医に相談すれば紹介してくれると思います。それらでも改善されない場合は、杖や歩行器が必要かもしれません。
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お申し出の症状や家族歴から、脊髄小脳変性症の可能性を否定できません。
主治医に神経内科を紹介してもらい、診断を確定し、それに基づく治療を受けることをお勧めします。早期受診により確定診断されると、症状を軽減する薬物治療やリハビリなど、様々な対処を早い段階で受けることができます。また、診断を受けていれば、医療費についても各種助成制度を利用することができる可能性があります。
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発熱によって脊髄小脳変性症の症状が進行するという明確な根拠はありません。
脊髄小脳変性症は主に小脳の神経細胞の障害により、緩徐に運動失調症状や自律神経症状などが進行する疾患です。したがって、自律神経障害の進行による体温調節機能の低下、排尿障害による膀胱炎などが発熱の原因となることがあります。
何か心配なことがあれば、主治医に相談してください。 -
シャンプー中に急に発症していますが、MRIにて脳血管障害は否定的のようですので、SCA3によるめまいや吐き気の可能性があると思います。
めまいの関連した前庭、小脳などの検査を含めて、神経内科専門医に良く診てもらって下さい。その上で耳鼻科など他科との連携も含め適切な治療を受けることをお勧めします。なお、仰向けでのシャンプーはその特異な姿勢から脳血管障害を引き起こす可能性がありますので注意が必要です。
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皮質性小脳萎縮症は、単一の疾患というよりは、孤発性で多系統萎縮症ではない脊髄小脳変性症の総称と考えられています。
一方、遺伝性疾患でもたまたま家系内で発症が確認できなかったり、親からの遺伝でなく突然変異で発症することもあります。したがって、皮質性小脳萎縮症でも遺伝子検査にてSCA6、SCA31などの遺伝子変異が見つかることはあります。遺伝子検査をして変異が見つかった場合、次の世代に遺伝する可能性が明らかになりますので、検査の前に主治医の先生とよく相談することを勧めます。
皮質性小脳萎縮症は、以上の説明でも想像できますように、あまり手がかりが無く、その原因解明はほとんど進んでいないのが現状です。 -
お申し出の「転ける」、「手に力が入らない」、「字がうまく書けない」、「箸が使いづらい」という症状からは、何らかの神経疾患の可能性を否定できません。
以前の脳検査をいつ頃お受けになったのかが定かではありませんが、その時点以降で何らかの病状が進行している可能性、あるいはその脳の検査に異常の出ない疾患の可能性もあります。主治医に神経内科を紹介してもらい、適切な検査を行って診断を確定し、それに基づく治療を受けることをお勧めします。
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わが国のSCDで糖尿病と直接的な関連性があるものはありません。糖尿病では脳卒中や末梢神経障害など神経の障害が多いので、運動失調症状の鑑別疾患として大事です。神経内科の専門医を受診して、この場合の両者の関係を伺って下さい。
なお、白人に多いFriedreich失調症では糖尿病の合併がありますが、この病気は日本人には見られません。関連しますが、ミトコンドリア病では小脳障害、難聴、視力低下などと並んで糖尿病もよく見られるので注意が必要です。
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脊髄小脳変性症の症状として、腰や首の震え(振戦)、筋肉の突っ張りなどの症状が現れることがあります。
また、若年層での発症率についてはよくわかっていませんが、常染色体劣性遺伝性の脊髄小脳変性症では小児期に発症するものが多く、常染色体優性遺伝性でも表現促進現象(世代を経るに従い発症年齢が若年化する現象)により小児期に発症する病型があります。
まず、神経内科専門医を受診し、正確な診断をつけることをお勧めします。 -
「よく見えない」程度が分かりませんが、加齢に伴う白内障や緑内障などがたまたま合併している可能性があります。まずは、眼科で見てもらって下さい。
SCDそのものが原因で、失明することはありませんが、まれに視力低下を伴う病型があります。またSCDでは、眼球を動かす神経の障害で、物が二重に見えたり、揺れて見えたりすることがあります。
眼科と共に神経内科の専門医にご相談することをお勧めします。 -
苦しそうに見える要因が呼吸障害である場合は、人工呼吸器の使用、気道切開などの対処で、症状が軽減できる可能性があります。呼吸障害の緩和について主治医と相談することをお勧めします。
発汗過多については、別の部位の発汗減少の代償のこともありますので、まずは主治医の先生によく伺って下さい。体温調節障害による発汗については、衣類の交換を小まめに行ったり、室温の調節、汗腺が塞がらないよう体の清潔を保つ、水分の補給が大切です。
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文面からは、3年以上前から尿漏れ(尿失禁)があり、3年位前からふらつきがあり、脊髄小脳変性症と診断されたと思われます。
SCDの中でもマシャド・ジョセフ病や、MSAでは自律神経障害がよくみられ、排尿の異常のほか、立ちくらみや便秘、夜間のいびき、睡眠中の無呼吸、発汗の異常などが現れることがあります。症状は個人差が大きく、また全ての症状が現れるとは限りません。
普通、SCDに伴う排尿障害は手術の適用になることはありませんが、様々な治療薬が効くことがありますので、神経内科医の主治医や泌尿器科医とよく相談することをお勧めします。なお、大便の漏れ(失禁)は一回だけでしょうか。その場合はSCDではなく別の原因で手術が可能な場合もあると思われますので、主治医と良くご相談ください。
自律神経失調は自律神経の異常という意味であり、今回のような排尿、排便の異常を含みます。ただ、医学的には自律神経失調はまた良くなる(症状が消失する)など機能的な異常を指し、SCDに伴う場合など徐々に進行する場合は、自律神経不全と呼んで区別されますので、注意が必要です。 -
脊髄小脳変性症の病型によっては、運動失調の他に、性格変化や認知症が現れることがあります。主治医に病型およびそれによるものかどうかまで聞いて確認してください。
脳が痩せるという表現は、脳が「萎縮する」すなわち小さくなるということ、脳を構成する神経細胞の減少を意味しており、単に血管が細くなるということではありません。
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脊髄小脳変性症では眼球の動きが悪くなったり、細かく揺れる(眼振)ことがあります。
その結果、物が二重に見えたり(複視)、揺れて見えることもあります。また、脊髄小脳変性症でなくても眼精疲労といった症状は知られています。
まず、ご記載の「目が疲れる。すっきりしない。」がどういう状態なのかを主治医によく診てもらって、必要に応じて眼科の診察も受けて診断を確定して、治療を行うことをお勧めします。 -
SCDでは、骨格筋に直接的な痛みの症状が出ることはありません。
運動失調症状をカバーするための日常動作が、身体部位の負担になっている可能性があります。足首やひざ等の痛み症状の緩和は、日常生活をより長く続けるためにも大切ですので、主治医と相談の上、その診断と治療を優先した方が良いと思われます。
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小脳の変性(萎縮)が疑われます。
「横割で見るとシワ(線)が普通より多い」という表現の意味は、シワ(小脳溝)が普通より広く目立って見えるということだと思います。
これは小脳の表面(皮質)が萎縮した結果であり、小脳全体が小さくなって(萎縮して)いなくても、「ふらつき」という症状とも合致しており、変性(萎縮)の初期の可能性が十分にあります。 -
自律神経障害により、発汗や体温調節の機能が障害されることがあります。
自律神経のバランスが崩れると発汗をコントロールしている交感神経の機能が乱れてしまいます。そのため、汗の量の調節や体温の調節ができなくなります。
SCDによる発汗障害ではふつう発汗は低下しますので、今回のように発汗過多については主治医に相談してよく見てもらってください。汗をかいたときに気化熱で冷たく感じることはありますが、体温調節そのものの異常もあり得ますので、それもよく相談してください。
発汗低下の場合の対処法としては、暑い時には冷房のよく効いた室内で過ごす、冷えたタオルなどで身体を冷やすことが良いでしょう。
逆に、寒い環境では低体温が起こりやすいので、温かい衣服を着用し寒い環境を避けることなどの対策をお勧めします。 -
意識障害であれば薬物である程度コントロールできますので、主治医に改めてご相談ください。
SCDは病型と時期によって、さまざまな症状がでることがあります。頭が「ぼーっ」とするのが意識障害かどうか分かりませんが、専門家に聞いてみることもひとつと思います。
SCDとして記憶障害などの認知障害が起こる可能性もありますが、他の病気の合併ということもありますので、これも専門家にご相談ください。
主治医の先生からCTによる検査では認知症は大丈夫だとのことですが、認知症はCTやMRIでは診断できませんのでご注意下さい。 -
SCDは病気のタイプにより、様々な症状を認めます。耳鳴りの原因がSCDによるものかも含めて、耳鼻科の受診はひとつの選択肢と考えます。もしSCDであった場合は神経内科を紹介されると思われます。
また、ろれつがまわらなくなるのは、協調運動不良による言語障害(構音障害)の可能性が考えられます。
言語障害の治療法には、言語リハビリの方法があります。障害自体を治したり、改善したりはできないのですが、各々の症状を診断し、それをどのように克服あるいは代償していくとよいのかを示してもらい練習していくことで、話しやすくなる、相手に伝えやすくなるという効果を生むことができます。
主治医の先生によくご相談してみてください。 -
痙攣発作や意識障害の可能性があります。
オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)は、脊髄小脳変性症のなかでも比較的進行が早いことが知られています。
また、目を大きく見開いたり、呼びかけても答えないときは、痙攣発作や意識障害の可能性があります。発作や意識障害ならば薬物である程度コントロールできますので、主治医にご相談ください。 -
残尿が多いことによる頻尿、または過活動膀胱の疑いがあります。
頻尿の原因は、尿が出にくく残尿が多いため、もしくは膀胱が過敏になっているために起こっていると考えられます。
一般的に、脊髄小脳変性症では自律神経症状の一つとして、膀胱が過敏になって尿をあまり溜められない(過活動膀胱)症状が多く見受けられます。
残尿を減らす薬や過活動膀胱の薬があり、比較的対処が可能な症状となっていますので、主治医に診断してもらい適切な治療を受けることをお勧めします。 -
セカンドオピニオン等を受診されることをお勧めします。
現在(2013年)の情報から、発症より5年経過しているとすると、ほぼ小脳症状のみを呈する脊髄小脳変性症の可能性が高いと思われますが、もし診断についてご心配であればMRI所見や他の検査所見を含め、セカンドオピニオンを受けてみることはいかがでしょうか。
監修:国立精神・神経医療研究センター 理事長・総長 水澤英洋先生