SCD・MSA相談Q&A
脊髄小脳変性症(SCD)・多系統萎縮症(MSA)と診断された患者さんやご家族の方々は、病気や診療などについて、知りたいことやわからないことが、いろいろあるかと思います。
そこで、これまでSCD・MSA治療を専門とされる先生方に、寄せられた質問とそれに対する回答を掲載致します。SCD・MSAに対する疑問や不安の解消の一助となれば幸いです。
Q&A
ご質問内容をグループ分けしていますので、まず、ご覧になりたいご質問内容を下記よりお選びください。
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SCDの治療に関するご質問
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具体的な処方薬剤名をお伝えいただいていませんが、一般的にどのお薬でも副作用が発現する可能性はあります。
「手の震え」がないのに「手の震え」の薬を出したのは、他に効果を期待してのことかもしれません。主治医にその点を良く聞いた上で、納得できた場合に服用するとよいと思います。その結果、期待した効果が無い、あるいは副作用が強い、といった場合には、主治医と相談してお薬の減量や中止をすればよいと思います。
また、SCDの運動失調症状を抑える薬剤もありますので、主治医に症状を詳細にお伝えして使用すべき薬剤についても相談することをお勧めします。 -
グルテンフリーの食生活によって症状が消失したのであれば、自己免疫性のグルテン失調症である可能性もあると思われます。
すなわち、脊髄小脳変性症ではない可能性もあります。食事に注意して気をつけて生活していただくとともに、必要であれば再度専門医に依頼して脊髄小脳変性症の鑑別診断を受けることをお勧めします。
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唾液が多いことに対しては、唾液を減らすお薬がありますので、まずはそれを試してみるとよいでしょう。
全身の緊張とは記載から判断すると痙縮のようですね。A型ボツリヌス毒素製剤は下肢にも使用可能ですので、上肢で有効なら主治医と相談のうえ下肢にも試してみてはいかがでしょうか。また、とくに下肢の痙縮に対する治療としては抗痙縮剤の髄注治療がありますので、主治医の先生に相談してみてください。
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外来による保険適用のリハビリ治療に対応した医療機関もありますが、脊髄小脳変性症のリハビリテーションはまだまだ一般的ではありません。
最初は入院して、運動機能の状態を詳細に検討して、リハビリテーションのメニューを決めてからリハビリを開始して、やり方をよく覚え、退院後は自宅で実施し、時々外来でもチェックしてもらうのが理想的です。
主治医がリハビリに消極的とのことですので、必要ならセカンドオピニオンなどを活用して他の神経内科医にご相談されて、リハビリを受療できる医療機関を紹介してもらうことをお勧めします。 -
脊髄小脳変性症では、自律神経症状の一つとして、頻尿などの排尿障害が現れることがあります。
現在、排尿障害に対する薬剤の効果がみられないとのことですが、残尿を減らす薬剤や過活動膀胱の薬剤がありますし、時には睡眠薬も有効なことがありますので、主治医によく相談することをお勧めします。
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介護保険によるデイサービスでは、食事・入浴や機能訓練を受けることができます。
しかし、治療などの医療行為は医師に委ねられているため、施設職員の指導内容には限界があります。必要であれば、主治医から「診療情報提供書」を作成頂き、通所施設での治療状況等の情報を提供してもらうことをお勧めします。
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ご自身の病型を把握し、神経内科医からそれに応じた治療やアドバイスを受けることが第一です。
SCDと診断を受けた直後は、誰でも精神的に落ち込み混乱するのは当然です。難病であることから、その状況を納得するのにも時間を要します。ただ、この病気は進行性ですので、気持ちが落ち着いたら、まずご自身の病型を正確に知ることをお勧めします。
詳しい診断を受けてそれに応じた治療を開始しましょう。
治る、治らないという基準で病気と向き合うのではなく、自分の個性として、病気と共存する、そして自分らしく生きる可能性を求めていく、そのためにできる治療法はたくさんあります。主治医の先生と十分相談して、病気と付き合うよい方法を見つけてください。
また、患者会でも同じような境遇の方がいらっしゃいますので、参加者と思いや悩みを共有することが、心の支えになると思います。 -
今後の研究結果によっては、臨床への応用が期待されます。
2012年より、厚生労働省難治性疾患等克服研究事業としてSCDを含めた運動失調症などの治療、リハビリにロボットスーツを医学応用するための研究が開始されました。その結果によっては、臨床への応用が期待されていますが、まだ研究・治験段階ですので、明確なお答えはできません。
しかし、ロボットスーツにより運動機能が回復する可能性も秘めており、今後の研究に期待したいと思います。 -
SCDの症状として、直接的に体重が減少することは考えにくいです。
但し、特定の病型においては筋力が低下するものもあります。詳しい病型について診断していませんので、断定的なことはいえませんが、SCDの主症状である運動失調が原因で、運動不足となり、筋力が徐々に低下し、体重減少に繋がった可能性も考えられます。
一定の体重減少で留まっているならば、日々の運動量やリハビリ療法を取り入れて筋力を維持または増強することで、体重の減少を抑制できる可能性もあります。ただ、詳細な診断および指導や体重減少が進むときは、主治医にご相談することをお勧めします。 -
薬物である程度コントロールできますので、主治医にご相談ください。
恐らく、自律神経症状の1つとして便秘が現れていると考えられます。便秘は、薬物である程度コントロールできますので、主治医にご相談ください。また、日常生活においても、繊維質の食べ物を意識的に多く摂ることを心掛けましょう。
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SCD・MSA治療薬の開発が進行中です。
現在、日本で認可されている薬は運動失調症状を改善する2種類だけであり、根治治療は困難な状況です。しかし、世界規模では数種類のSCD・MSA治療薬の開発が進行中であるほか、遺伝子治療や再生治療の研究も活発に行われており、今後日本初の新薬が出る可能性もあります。
しかし、いずれの新薬開発においても、臨床応用する場合には、治療効果や安全性の面で多くの基礎研究が必要です。それまでの間、疾患そのものは治せなくても、様々な方法により障害を軽くすることで生活の質を向上させることはできますので、そういった面にも視点を置いてみてください。
したがって、医師、国内外の研究者だけではなく、患者さん、ご家族、行政、製薬会社等の全ての関係者の緊密な協力が、新薬の早期開発の近道といえます。 -
基本的にはSCD以外の急性症状を優先して治療することをお薦めします。
あらわれた症状にもよりますが、SCDの治療は長期に渡るため、基本的にはSCD以外の急性症状を優先して治療することをお薦めします。
場合によっては、主治医と相談の上、リハビリを休止してでも、腰痛等の別の急性症状の悪化を抑えるため、その治療に専念した方が良いこともあります。
監修:国立精神・神経医療研究センター 理事長・総長 水澤英洋先生