在宅医療アドバイス


専門職種各エキスパートからのアドバイス

臨床工学技士の関わり

国立病院機構 箱根病院 神経筋・難病医療センター
臨床工学技士  瓜生 伸一様

1975年、北里大学病院入職。1986年、北里大学東病院異動後、神経筋疾患、在宅人工呼吸療法に関わる。2012年10月、国立病院機構 箱根病院入職。現在に至る。


はじめに

最近における在宅医療では、生命維持装置である人工呼吸器をはじめ酸素療法機器、吸引器、動脈血酸素飽和度測定装置(パルスオキシメータ)などさまざまな医療機器が使用されるようになってきました。このような医療機器を安全に使用するには、適正に取り扱うと同時に日常点検、定期点検、定期的な交換などの保守点検を適切に実施することが重要になります。


医療機器使用時の問題

SCD・MSAの在宅医療において医療機器を使用することになった場合、使用する目的によって選択する機種が異なることがあります。例えば、吸引器では自宅に居る場合のみ使用する場合と外出時などでも使用するのでは、内蔵バッテリーを搭載しているかどうか、車のシガーソケットでも使用できるかどうかなど、必要とする機能が異なります。しかし、最近の災害時における対応などを考慮した場合には、内蔵バッテリーを搭載した機器を選択した方がよいでしょう。また、パルスオキシメータでは、一時的に測定する場合と人工呼吸器と併用して継続的に測定する場合で搭載される機能が異なります。人工呼吸器との併用では警報機能付のパルスオキシメータを使用することで、万が一、人工呼吸器の警報が作動しない場合でもパルスオキシメータの警報が作動するため、より安全に人工呼吸器を使用できます。なお、これら医療機器は、自治体による補助金制度によって購入することも可能です。ソーシャルワーカーの方と相談しながら検討するとよいでしょう。

人工呼吸器では、安全性、信頼性を維持するために同じ機種であっても定期的に人工呼吸器を交換することが必要ですが、同じ機種であっても長期間使用した人工呼吸器と交換後の人工呼吸器では特性が異なります。また、何らかの理由で機種を変更した場合には、機種の違いによりいろいろな性能に相違が出てきますので、機器の交換後、違和感、不快感を覚える患者さんも多いと思います。このように医療機器を使用する場合、その選択や使用、取り扱いなどに関してお悩みになっている患者さんやご家族もいると思いますが、このような場合には、気兼ねなく臨床工学技士に相談してください。


臨床工学技士の関わり

在宅医療において医療機器を安全に使用するために、ご家族や介護者に対して医療機器の取り扱いに関する指導や保守点検、管理などを行うのが臨床工学技士です。実際に在宅医療に関わる臨床工学技士はまだ多くはありませんが、医療機器に関してわからないことがあれば、近くの臨床工学技士に気兼ねなく相談してください。また、誰に聞けばいいかわからない場合には主治医や訪問看護師など近くにいる医療スタッフに声を掛けてください。関わりのある臨床工学技士が適切に対応します。

(原稿執筆 2016年7月)